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【坂道46小説第5話】あの世界で再び会えるなら、夏の景色を見た

第5話 君が眠っている間にも、君の本を読んでいる

 

―寛政30年。東京都特別行政区、国家連合局

 

そこでは、国家なるものが、代々から積み重なる積み木のような、迸る汗の臭いがするあの夏の思い出のような、我々、魔導関係者には想像もつかない琴線の生活シーンがあり、凡百の有象無象が、夢の続きを見ていた。

 

今を生きる、今を生きろ、そして今を楽しめ―

 

そういった意味の石碑の文言が、仰々しいまでに絢爛な、そして神々しいほどの滝の流れとともに、そしてそして、さらにさらに、過去の列聖と共に手厚く備えられていた。

 

我々が歴史の基準点としている国家への信頼を、その国家自身に求めるのであれば、東京都特別行政区に行けば良い。琴音はかつての所属研究機関で、司法修習予備試験のインターンシップを受ける前に上司のサユリ・マツシタにそう言われていた。

 

今では、そのサユリ・マツシタは日本国国家連合会の評議員並びに主席総務官、つまりかつての日本国で言えば、内閣総理大臣と官僚のトップのようなものになっていた。

 

今を変える、過去には戻らない、未来を掴もう―

 

サユリ・マツシタの政治スローガンである。彼女は日本国で史上初の女性の主席代表として、各地を転々としていた。

 

ところで、私設秘書官のウエムラは兼ねてからサユリには懸念を抱いている。社会のマネーとも呼ぶべき、社会の原動力、国家のインセンティブとなる総量が、マツシタ行財政運営に変わってから緩やかな下落を見せているからだ。

 

総理…

 

かつての名残でウエムラはサユリ・マツシタにそう話しかける。

 

総理…一言申し上げます。このままでは日本国は単刀直入に申し上げまして、崩壊します。日本国は先々の未来を予測して、懸念される材料があると徹底的に自虐と情報公開の道に進み、外部の専門家に頼る伝統があります。こうした伝統については、日本国の自由主義の憲政史の失敗、そしてその失敗の本質をいま一度ご確認して頂く必要がありますが、兎にも角にも日本国とは誰かに頼るばかりで自分から動こうとするときには、そのあまりにも強大な未来への希望により、誰もが思い思いに動くことはできない強固な社会主義全体主義の資本国、資源地域であるのです。そのことは総理も皇立魔法学校で多少なりとも勉強なされたとは思いますが…。

 

サユリ・マツシタは瞑想しながら静かに秘書官の口上を聞き入れていた。そしてようやく発した一言は当時としては話題になったが、現在では記録にない。後に華族や貴族のみならず、皇族、そして家族制度をも崩壊させた、あの城塞都市構想にもつながった思想体系だとされるが真相については多くの研究者の興味にない。

 

文化2年。7月。とある地域の中央広場。

 

琴音は地域の祀りの主導として、完全ではないものの、上々の運営を見せていた。長老と呼ばれる夫婦たちは別の用事があるらしく1か月ほど前に東京特別行政区へと転籍となっていた。

 

あと2か月ほどの運営だ。気を引き締めよう。思えば、5月の苦行は振り返るべきではないな。忘却、忘却っと…。

 

夜になると琴音は地域の図書館で、日本国の歴史を調べるのが最近の日課だ。その表情はどこか寂しそうでもあった。

 

7・27のマイノート条約会議を経てサユリ・マツシタ主席着任。魔法を用いる女性から初めての評議員と主席総務官の任命が認められたと記録されている。

 

あの頃から、魔法は存在していたのか…

 

何らかの意識と意思が介在するように、琴音は自然と呼応していた。

 

ところで、あなた、ここがあのマイノート条約会議から2年後の未来で、物理的距離としては1000キロも離れてはいない地域だって知ってます?

 

はっとして振り返り、ブックの交換を済ませて所属とネームを確認すると、そこには司書教官でサカザキ・シホとある。

 

あ、アンドロイド型ヒューマンか…

 

思わず声に出して内心を漏らしてしまった琴音のもとへ協会から新たな伝令が来る。

 

琴音君の功績を認証して、魔導省の地域推進化会議に招待するので、獲得予算の半分以上を離税せよ。

 

認証のある正式なメッセージが琴音のスマート携帯に届いたのはこれが二度目となった。

 

続く