地域社会、広島県新尾道、兵庫五国と神戸郡神戸市に関して

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【坂道46小説第3話】あの世界で再び会えるなら、夏の景色を見た

第三話 法の彼方にあるものは

 

落ち着いて、いま起きたことの顛末を話そう。そうだ、あれは…私がまだ魔導省の前進となる司法行政監査室で研修を受けていた時のことだ。

 

私の上司であるベリエル・リサはいつも私に司法と行政の関わり、そしてそれが魔法的思考力につながることを教えてくれたっけね。

 

彼女は一筋縄ではいかない性格だ。どこから来たのか、そしてどこへ向かっているのかもわからない。例えチームの誰が犠牲になろうとも国家にとって最善とは契約関係の維持と運用なのだと常日頃から力説していた。今でも夏になるとリサ先輩の言葉を思い出す。

 

―「魔法というものは手品などではない。季節なんだ。時期がくればやってくる、そのお迎えを短縮していくのが我々、魔法を用いる者の腕の見せ所だ」

 

つまるところ魔法とは人々のためではなく秩序の維持の為にあるのですね?」

 

「ミリア!姿勢を正せ。我々行政官なり司法官が秩序などと、口出せる立場にない。秩序とは形式にすぎない。あるべきものもないものも魔の世界ではそもそもにおいて何もない。ルールも秩序もないところから自然を生み出す、それが魔法だとあの宗教論争、戦争で学ばなかったのか」

 

ミリアは常日頃、正義というものへの自負が強かった。しかし先輩の厳しい法の運用への姿勢から正義を気取ることは誰のためにもならないことに気が付いたのだ。

 

誰の為に誰があるのか、その事物が史実であるなら歴史には死人しかいない

魔法の世界でのもっとも基礎的なコメンタールである。

 

「歴史には死人しかいない…か」

 

ミリアはいつもこの言葉を胸に刻みながら職務についていた。

 

―文化二年。5月。とある地域への入り口前広場

 

琴音は協会の連絡人から三冊の本とイベント手続きマニュアルを受け取っていた。

汝をよく知る為の指南書、それに…〇△×〇…難しくて言語がまだわからないようであった。地域の人々は、祀り以外には何を楽しみに生きているのか数年住み続けた琴音の結論めいたものは、夜の会食の楽しみにあるのだと気が付いた。

 

御飯がおいしければ、そして安心して眠れて、良い朝がまた来れば清々しい。

 

またもや、琴音はそう強く自分に言い聞かせていた。

 

夏の訪れはもうすぐだというのに、自分の気持ちの高まりはどこか嵐の前に静けさにも似ているし、鳴りやまない鐘の音にも似ているような気さえしていた。

 

私が私でいられるのは、あの夏がまた繰り返しているのは、時間という概念が…

 

琴音はそこで思考をストップさせる。うまく論理を展開できないのだ…。そして気が付くと、ふと広場の時計を見上げるともうすでに15時を回っていた。

 

大変だ、長老、、じゃなかった。先生の家に呼ばれているんだった…。

 

琴音は大事な用事を思い出すと、連絡人から受け取った本とマニュアルを鞄に詰め込んで急いで坂道を下り始めたのだった。

 

時を同じくして―

 

わずか20歳にして魔導省次席広報官に上り詰めたミリアとその後輩で秘書のマイ・サカモトが部屋で口論している。ここではマイAと呼ぶ物体にミリアが厳しい口調で質問をしている。

 

「マイ、あのアンドロイドは何だ?お前と同じ顔をしているがお前はあんな自然にはしゃべれない。あんな恍惚とした、恋をしたかのような表情がお前にできるか?」

 

マイは何も答えない。いつものようにロボットのようにうつむいたままだ。

 

「マイ、私に隠し事はなしだと言ったろ?お前のマスターは私しかいないんだぞ!」

 

そこでマイBとも呼ぶべき物体が話しかけてくる。

 

「ミリア様、申し訳ありません。緊急事態情案が発動され、このマイ・サカモトと同じタイプのクローンヒューマンの編成が法務省主導で決定されました。今回の案件は法務省の手続きにおいての管轄とのお達しです」

 

「運用がどうって話は昔から先輩から聞いてる。行政官や司法官が正義を語れないのもわかる。しかし、マイにクローンが発動することに関してはこちらとしては知らされていない越権行為だ!!」

 

「ミリア、今回の件は緊急条項なの。緊急時は法務省の管轄ですべてが動くと魔法も組成してあるはずよ。実力部隊は法務省が握っているわ。そのことは理解できる?」

 

マイに似た物体たるマイBは魔導省の中枢で不敵に微笑むばかりだった。続く